*31 子烏の昇天

DSCF5252
(ISO/200, f/5.6, 1/220, トリミング)

おそらくは家の前の空き地の隅に立っている大木にカラスの巣があるのだろう。そこから子烏があやまって落ちて(私の推測)、わが家の庭先までとぼとぼ歩いてきて、そこでうずくまってしまった。物干しの下とか、花壇の真ん中とか、玄関先とかに。老いた母が大騒ぎした。「ほんとに困ったよ。あんなところにじっとしていられたんじゃ、踏みつぶしてしまうよ」。つがいの親烏(たぶん)は人間(老いた母と私のことだ)が家から出ていくたびに、電信柱の上からわれわれを威嚇して、大声で啼き喚いた。カーカー、ガーガー。「いやだよ、薄気味悪いったらありゃしない」。その烏が昨日啼きやみ、姿も消した。子烏が死んだのだろう。けれど家の周辺に死体は見当たらなかった。親烏が子烏をくわえて巣まで運んだ? 子烏は人目を避けたところで密かに死んだ? あるいは天国に召されたか?