これは秋味(秋鮭)を捕獲するための堰堤を見下ろすホテル。十勝川温泉から少し(一キロくらい?)離れたところに建っている。もう営業はしていない。「幽霊ホテル」とも呼ばれている。こちらは日陰になるので、そうは目立たないが荒れ放題である。ほうぼうの窓が破れている。民間資本で建てられたが採算が合わず、地元の池田町に引き取ってもらったらしい。それから二十年はたつと聞いた。ただ放置しているだけである。取り壊すなり、何かの工夫をして営業を再開することはできないのか、とか思うが、いずれにせよお金がかかるのだろう。
言うまでもなく荒れ放題のホテルを建物として美しいと思って撮ったわけではない。ホテルの前には橋が架かっていて、中州に渡れるようになっているので、ドライブと散歩がてらによく写真を取りに来るので、このホテルは見飽きるほど眼にしている。
数枚写真を撮って、さて帰るかと車に乗り、運転席からふと見上げるとドキッとした。なかなか迫力がある。少し傾斜を降りたところに駐車場があるので、見慣れない角度で見上げたせいかもしれない。
建築として美しいわけではない。遺跡でもない。川や樹木や山や光や風のように慰謝してくれるわけでもない。人間の愚かさが堂々と突っ立ているだけだ。なぜかそれが気になる。美とは何かと考えたりもする。