*215 春の雪(3)

大津(ISO/200, 55mm, 0.33ev, f/5.6, 1/350, 21/03/21)

〈春の雪〉シリーズ、最後の一枚です。これは、できるものなら絵にしたいと思った写真です。たぶん、木立がまとった湿った春の雪が油絵具の鉛白(ジンク・ホワイト)の感触をよみがえらせたからでしょう。高校時代は選択科目に美術があって、毎週一時間は美術室でキャンバスに向かっていました。大方の常識に反して、絵画は時間芸術だと思っています(ということは、音楽は空間芸術だということになります)。絵を描くのにこめられた時間が、それを見る人のなかでその人固有の時間として紡ぎ出されていくものだと考えているのです。では、写真はどういう芸術なのか? それがいまだによくわからない。もちろん、自分の撮る写真が芸術だと思ったことはないし、芸術を目指しているわけでもない。ただ、心洗われたいと思って風景を見つめ、シャッターを押しているだけです。