
十勝太というのは、かつての十勝川河口一帯をさした地名——今もその地名は健在ですが、現在の十勝川本流の河口は大津のほうに移っているので、念のため。ここは現在浦幌十勝川と呼ばれている分流の河口付近です。かつてこのあたりにはアイヌの人々の集落があって、この岸辺の上にはチャシと呼ばれる遺構がある——こんもりと盛り上がった丘のようなところで、浦幌十勝川の流れを見下ろすことができます。岸辺まで降りられる道を見つけたので、そこで撮影。そのあと昆布刈石海岸へ。季節に一度くらいは来たくなるスポット。

「春のきざし」と銘打ってみたものの、これじゃ真冬と題してもいいような。とにかく、春めいてきたかと思ったら、ここにきてドカン、ドカンと大雪が降って、雪かきに追われました。でも、すでに地熱が上がってきているので、どんどん溶けはじめている。というわけで、雪原のなかに——どういうわけか——丸くぽっかりと浮かんでいる木立も、ふつうなら枝葉に雪が残っているはずなのに赤茶けた地肌を剥き出しにしている。まあ、これも「春のきざし」だと思ってみてください。幕別といってもとても広いのですが、この場合、地名にはさほど意味がないのでご容赦を。
十勝を知らない人は、なんでこんな雪原にヨーロッパ風の城館と観覧車が並んでいるんだと思うだろう。じつはこれ、30年ほど前に十勝のデベロッパーが立ち上げたテーマパーク〈グリュック王国〉の跡地。中世ドイツやグリム童話の世界を再現するユニークなテーマパークだったが、バブルがはじけ、紆余曲折の末、結局は閉園に追い込まれた。でも、建物や施設を壊して更地にするにはお金がかかる。それで放置されている。悪ガキが敷地に侵入して悪さをしたりするので、門は厳重に閉鎖され、「不法侵入した者は警察に通報する」という物々しい警告の看板が掲げられている。いつも同じような構図の写真ばかりじゃ撮影者も飽きるので、横長にトリミングしてみた。北海道はコロナウィルスの拡散を防ぐために、週末の外出禁止令(自粛でしたね)が出たけれど、車で移動するぶんには構わないだろうというわけで、ガソリンを入れてから、いつものように撮影ドライブに出かけた。

この一週間ほど、朝はマイナス20度前後の日が続いています。昔は(半世紀前!)こんなの当たり前だったけれども、最近は暖冬というべきか、異常気象というべきか、マイナス20度以下の気温が珍しくなった。この写真は雪に覆われた畑のなかの一本道で撮影したもの(時刻は15:44)。道は南北に通っていて、西から東へ風が通り抜ける。道の西側にはシャッター式の金属製の防風柵が設置されていて、二、三百メートル置きに柵が途切れている。そこのところを地吹雪が道を渡っていく。鋭利な雪庇ができていて、そこをパウダー状の雪が風に乗ってジャンプする。見えるかな?

今日の午後、久しぶりに大津の港まで足を伸ばした。ジュエリーアイスとか呼ばれる流氷のかけらが海岸に打ち寄せる季節になったというので、たくさんの人がカメラを持ってきていた。三脚はいいとしても、超望遠レンズを装着したカメラだとか、何を写そうというのか、とほうもなく物々しい装備の人もちらほらいた。人の動きに誘われるようにして、何枚か流氷のかけらを写してみたけれど、全然気持ちが動かない。釣りではないけれど、今日はボウズかと思って帰りかけたら、目の前の家並みの屋根をさっと掃くように白い雲がたなびいていた。こっちには大いに気持ちが動いて、満足して帰ってきた。