*210 散光。

昆布刈石(ISO/200, 18mm, f/7.6, 1/1600, 28/02/21)

昆布刈石という風変わりな名を持つ、この海を見下ろす断崖は訪れるたびに表情を変えるのですが、今朝(十時半頃)はとりわけ虚をつかれるものがありました。まずは、ほぼ無風で海面が沖合まで凪いでいたこと。次に、空模様が快晴でも曇りでもなく、薄雲が太陽を隠していたこと。そのために、このように光が霧がかったように大気全体に散乱していた(写真はかろうじてその状態をとらえていますが、じつはもっと靄がかっていた)。春先でなければありえない風景。散光なんて言葉があったかなと辞書を引いたら、ちゃんとあったのでそれをタイトルにしました。

*209 大津港の漁船。

大津(ISO/200, 35mm, f/16, 1/220, 21/02/21)

すべての点検を終えて、いつでも出漁できます、という構えだろうか。漁船の駐車場みたいな港の一画に数十隻の漁船が相対するように並んでいる様はとても壮観なのだが、さて写真を撮る段になるととても悩ましかった。絵になりそうでならない。それで窮余の策として、いちばん「ベタ」なのを選んだ。あまり勇敢そうでもなく、気魄のようなものも感じられないのだが、安定感抜群なのはやはり数知れない海の試練を乗り越えてきたからだろうと思って。それと今頃の季節としては暖かい今朝の陽射しを浴びて、どこか春を感じさせたからかもしれない。

*208 水ぬるむ。

千代田堰堤(ISO/200, 35mm, f/5.6, 1/125, 14/02/21)

今日も午前中は原稿書きをしていたので、午後も日が傾きはじめてから外出。行ける場所は限られてくるので、またもや千代田堰堤。雪はまだ残っていますが、川面の氷はすっかり溶けて、夕陽に照らされたさざなみもどこか温かい感じ——伝わりますか?

*207 雪の降り出した山道。

長流枝(ISO/200, 35mm, f/5.6, 1/280, 07/02/21)

長流枝と書いて、おさるし、と読みます。十勝川温泉から池田・本別方面に抜ける裏道のような山道です。といっても、十勝に住んでいる人でなければ、どのあたりかまったく見当もつかないでしょう。十勝に住んでいる人なら、日曜日の午後になんでまたそんなところを走っているのかと訝る向きもあるでしょう。別に謎はありません。すべてはこのブログを飾る写真のためです。東京でも、ここ帯広でも、「ブログ見てますよ」と声を掛けられることがあるので、いつどこで誰が、このブログを訪れているかわからないという軽い緊張感があるので、週に一度の更新は欠かさないように、少しでもおもしろい写真が撮れればという一心で、毎週日曜日は気分転換を兼ねて車を転がします。山道を走っているうちに雪が降り出し、こんな写真もたまにはいいかと思い、シャッターを切った次第。ああ、朝の散歩を再開できる春が恋しい。

*206 半島。

千代田堰堤(ISO/200, 35mm, f/5.6, 1/1400, 31/01/21)

今日も近場です(千代田堰堤)。午前中は仕事で原書の下読みをしていたので、午後からだとそんなに遠出ができなないということもありますが、先週モノクロの写真を掲載してみたものの、どうにも満足できなくて、再度チャレンジのつもりで同じ場所を訪れました。しかし、やっぱり白黒はむずかしい。橋の上から真下を覗きこむと、洲のようなものが川の流れに突き出していて、そこに雪が降り積もっている。紀伊半島の航空写真のように見えたらおなぐさみ、といった次第。

*205 やわらかな朝。

千代田堰堤(ISO/200, 35.8mm, f/5.6, 1/1100, 24/01/21)

久しぶりに池田町の千代田堰堤の写真です。ここは十勝川温泉の近くにあって、よく立ち寄って写真も多く撮るスポットなのですが、風景が大柄なので、いまいちここに掲載する気分にならないのです。今日のもよく撮れた写真とはいいがたいですが、白黒の感触を確かめたいと思ってシャッターを切りました。大雪がどーんと降ったあと、寒い日が続いていたのですが、今朝はさほど寒くもなく——といってもマイナス10度近くはある——なんとなく景色もやわらいで見えました。それにあやかりたい気分の一枚。

*204 冬の海。

大津(ISO/200, 35mm, f/5.6, 1/950, 17/01/21)

日曜の朝、空を見上げると曇天、今にも雪がちらつきそうな気配なので、さあて今日はどうしようかと思い悩んでいたのだが、ふと、こういう日こそ大津がいいのじゃないかと思い立ち、海へと車を走らせた。ジュエリー・アイスで賑わう大津の海岸も、大雪が降ったあとの曇りの日には人出がほとんどなく、宝石のように輝いているはずの氷塊も、ごらんのとおり浜辺に打ち寄せる波のせいで見る影もない。言うまでもなく、この写真は海を背にして撮った。海沿いに立ち並ぶこの家々のたたずまいがなんとなく好きでここにたびたび来るのである。撮影しているあいだに雪が繁く降り出して、早々に立ち去りました。

*203 零下20度の朝。

十勝川温泉(ISO/200, 35mm, f/16, 1/450, 10/01/21)

今朝はマイナス20度以下に気温が下がりました。測候所の正式発表はまだ見ていませんが、今年一番の寒さでしょう。しかも、一昨日にはたっぷり30センチの雪が積もりましたから、これは特別な景色が見られるぞと心躍らせて雪道に車を走らせました。で、この一枚。撮影時刻は朝9時を少し回ったあたり。

*202 岸辺、モノクローム。

札内川(ISO/400, 35mm, f/5.6, 1/400, 02/01/21)

新年早々、なんで白黒なんだと、首を傾げる人もいるかもしれません。昨日(一月二日)の午後、神社にお参りに行ったあと、いつものように散歩がてらに川に足をのばすと、日没間近のまぶしい夕日が岸辺の枯れ草を金色に染めていて、思わずカメラを向けました。そのときふと、このコントラストは白黒にすると映える——今時の言い回しだと「ばえる」?——のではないかと思って写した一枚です。鬼気迫るようなやつも撮れてしまったのですが、そっちは辛気臭いので、シンプルなほうを選びました。

本年もよろしくお願い申し上げます。

*201 氷結。

生花苗(ISO/400, 35mm, f/5.6, 1/950, 27/12/20)

今朝は、太平洋に接する生花苗(おいかまない)の沼に行ってきました。じつは12月の初めにも行っているのですが、そのときはドローンを飛ばしている青年たちが湖畔を占拠(?)していたので、すごすごと帰ってきたのです。で、今日は誰もいなかった——年の瀬も押し迫ったこの時期、こんな薄ら寒く荒涼とした海岸の沼地を訪れる物好きは、たぶん十勝にはいない。大津の海岸はきっとアイスジュエリーの撮影で賑わっているのでしょうが、意地でも行かない。こんな凍てついた岸辺の写真ばかり数十枚ほど撮ったなかの一枚、いちばん寒々しいやつを、年忘れにどうぞ!